低酸素脳症の症状と治療

脳低温療法

 

脳低温療法とは、脳に障害を受けた場合に脳の障害をそれ以上進行させないようにするために、人為的に低体温症を引き起こさせて体温を低く保つ治療法のことです。

 

一般的に、脳が重大な障害を受けた場合には脳組織に浮腫が起こるほか、カテコールアミンやフリーラジカルなどが放出され、徐々に脳組織が破壊されていきます。特に緊急の脳障害患者の場合には、このような脳組織の破壊の進行を抑制することによって、患者の救命率を上げることができ、さらに後遺症の軽減にもつながります。そのため、救急の現場において、脳組織の破壊を抑制する事は重要な課題となっているのです。

 

脳低温療法では、まず全身麻酔薬や筋弛緩薬などを患者に投与した後に、水冷式ブランケットなどを使用して患者の体温を31~33℃程度に下げることで、代謝機能を低下させて、脳内での有害な反応の進行速度を抑え、組織障害の進行を抑制しています。

 

一般的に重度の低体温症では、心肺活動が停止したり意識の喪失が引き起こされますが、この脳低温療法ではそこまで体温を低下させないために、軽い意識の低下や心拍数の減少を招く程度です。

 

しかし、救急医療においては一秒でも早い処置が重要であり、僅かな違いでも後遺症などの表れ方に格段の差ができてしまいます。実際には、脳低温療法は事故による負傷や発症から6時間以内に行われる必要があり、この療法と並行して外科的な措置や投薬といった様々な治療法が行われるのが一般的です。