低酸素脳症の症状と治療

脳の損傷の影響

 

一般的に、酸素が脳へ供給されない状態が3~4分続いてしまうと、脳細胞が損傷されてしまいます。脳のどの部分が損傷されるかによって、その後の影響も変わってきます。すなわち、損傷を受けた部分が持っていた機能が失われたり、その機能が十分に働かなくなってしまいます。

 

脳の中でも特に酸素の欠乏に弱い部分は、小脳のプルキンエ細胞と頭頂葉および後頭葉皮質、そして海馬です。プルキンエ細胞は小脳皮質を代表する統合的ニューロンであり、小脳からの出力信号を発する唯一の神経細胞です。そのため、このプルキンエ細胞が損傷を受けると、小脳の機能に大きな影響を及ぼすことになります。

 

小脳の主要な機能は知覚と運動機能の統合であり、平衡、筋緊張、随意筋運動の調節などを司っています。このため、小脳が損傷を受けると、運動や平衡感覚に異常をきたし、精密な運動ができなくなったり、ふらふらとした歩行となることがあります。

 

海馬は、記憶や空間学習能力に関わる脳の器官です。そのため、ここに損傷を受けると認知に関する能力が弱まります。頭頂葉は感覚情報の統合を行っており、特に空間感覚と指示の決定を担っています。

 

例えば、頭頂葉は体性感覚野と視覚系の背側皮質視覚路を構成しています。これにより頭頂葉において、視覚によって知覚した対象の位置を身体座標における位置に変換することが出来るのです。

 

後頭葉は哺乳類では視覚形成の中心であり、視覚野の解剖学的領域の大部分が後頭葉にあります。頭頂葉、側頭葉、後頭葉の連合野になんらかの病変があると、色彩失認、運動失認、失書といった症状が現れることがあります。